ヒトiPS細胞から正常な機能を示す心筋細胞を得る基本的技術が確立される

京都大学再生医科学研究所/iPS細胞研究所の山下潤准教授研究グループと京都大学内分泌代謝内科の中尾一和教授は、ヒトiPS細胞(およびマウスiPS細胞)からの心筋分化の際に、サイクロスポリンA(以下CSAという)を作用させることで、効率良く心筋分化を誘導できることに加え、本方法で誘導した心筋細胞は、心筋特異的な機能や構造を有し、正常な心筋に近い電気生理学的反応や微細構造を示すことを明らかにされました。

本成果のポイントは下記にあると考えられます。

・CSAはヒトiPS細胞からの心筋誘導において、中胚葉期に添加することで、躍動しているコロニー数を約4-4.3倍に増加させたこと。

・CSAを用いたヒトiPS細胞から誘導した心筋細胞(以下CSA iPS心筋細胞という)は、鼓動に同調したカルシウムトランジットを観測、誘導した心筋コロニーは10ヶ月以上も自発的活動を続け、約3ヶ月鼓動するコロニーから分離した細胞は、心室の細胞のような活動電位パターンを示し、心臓を構成する種々の心筋細胞の作成が可能になったこと。

・CSA iPS心筋細胞はβ刺激剤のイソプロテレノールを加えることで、心筋細胞の拍動の加速、β阻害剤のプロプラノロ ールの添加による拍動の減速を確認。HERGチャンネル阻害剤注1のE4031に対して、濃度依存的にQT延長を示す所見を確認したことで、CSAを用いたヒトiPS細胞から誘導した心筋細胞は、有用なヒト心筋細胞モデルになりうるであろうこと。

・CSA iPS心筋細胞には、筋原繊維のZ帯構造やミトコンドリアを豊富に観察することができ、細胞間には、デスモソームと呼ばれる細胞接着構造を伴った介在板、心房の分泌顆粒、そして糖原顆粒など心筋特異的構造を観察することができたこと。

CSA iPS心筋細胞は、創薬における毒性検査や心筋の再生医療への利用が期待されており、今後、更なる改良により、より生体内の心筋に近い細胞を作り出すことが可能になると考えられているそうです。楽しみですね。

京都大学iPS細胞研究所「マウス及びヒトiPS細胞の心筋細胞分化に及ぼすサイクロスポリンAの効果」http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/110226-151956.html

論文: PLoS one “Induction and Enhancement of Cardiac Cell Differentiation from Mouse and Human Induced Pluripotent Stem Cells with Cyclosporin-A” http://www.plosone.org/article/info:doi/10.1371/journal.pone.0016734